ものづくり補助金23次公募スタート|22次から変わった賃上げ要件を整理
― 賃上げ要件の厳格化に備え、返還リスクを避けるための確認ポイント ―
今回のテーマは、
「ものづくり補助金23次公募スタート! ― 22次公募から変わった賃上げ要件を整理 ―」です。
■ はじめに
ものづくり補助金23次公募では、賃金引上げ要件の運用が整理され、採択後の管理がこれまで以上に重要になりました。
特に注意したいのは、賃上げ目標の設定だけでなく、従業員等への表明や達成状況の管理まで求められる点です。
目標が未達の場合には、補助金返還の対象となる可能性もあります。
今回は、22次公募から何が変わったのか、そして計画づくりで押さえておきたい実務上の注意点を整理します。
■ 第23次公募で何が変わったのか?
23次公募では、賃金の増加要件(基本要件②)が、「従業員1人あたり給与支給総額・年平均3.5%以上」へと整理されました。
22次公募では複数の見方がありましたが、23次公募では対象指標が明確化される一方で、達成水準や未達時の扱いはより厳格になっています。
【22次公募との主な違い】
| 項目 | 22次公募 | 23次公募 |
|---|---|---|
| 対象指標 | ①給与支給総額(従業員・役員) ②1人あたり給与支給総額(従業員・役員) |
従業員1人あたり給与支給総額 |
| 達成水準 | ①年平均2.0%以上 ②都道府県の最低賃金の直近5年伸び率以上(いずれか) |
年平均3.5%以上 |
| 未達時の扱い | 未達の場合、補助金返還の対象 | 未達成率に応じ返還 表明が無い場合は取消・返還 |
つまり、23次公募では「賃上げ」が単なる加点要素ではなく、補助事業全体の前提条件として扱われていると考えるべきです。
申請時に見栄えのよい数字を置くのではなく、数年にわたり本当に実行できるかという視点で経営計画を組み立てることが重要です。
■ 賃上げ要件(基本要件②)を正しく理解する
【年平均3.5%以上の増加が必須】
補助事業終了後の事業計画期間(3~5年)において、従業員1人あたり給与支給総額を年平均3.5%以上増加させる必要があります。
あわせて、申請時には目標値を明確に設定し、その内容を従業員等へ表明することも求められます。
【「給与支給総額」の正しい定義】
ここでいう「1人あたり給与支給総額」は、従業員に支払う給料・賃金・賞与などを基礎に算定します。
一方で、役員報酬、福利厚生費、法定福利費、退職金などは含まれません。
実務では“人件費全体”の感覚で混同しやすいため、定義違いによるズレには注意が必要です。
【算出対象となる従業員の考え方】
算定対象となるのは、各年度において全月分の給与等の支給を受けた従業員です。
そのため、以下のような点を整理しておく必要があります。
- 中途採用・退職等で全月支給でない従業員は、その年度の算定から除外
- 産休・育休・介護休業等で時短勤務の従業員は除外可能
- パート等は、正社員の就業時間に換算して人数を算出
制度上の考え方を誤ると、申請時の計画数値と実績報告時の数値が一致しないという事態につながります。
【計画作成時の確認ポイント】
- 全月支給の従業員のみを対象にしているか
- 中途入社・退職者を年度ごとに適切に除外できているか
- 休業・時短勤務者の除外ルールを反映しているか
- パート等を就業時間換算で人数算出しているか
■ 賃上げ要件を軽く考えた場合のリスク
【目標未達成なら補助金返還の可能性】
事業計画期間の最終年度に目標を達成できない場合、未達成率に応じて補助金返還を求められる扱いが明記されています。
さらに、従業員等への目標値の表明が行われていない場合には、実績以前の問題として交付決定の取消や補助金返還につながる可能性があります。
【よくある失敗パターン】
- “人件費総額”で見てしまう
役員報酬や法定福利費などを含めてしまい、制度上の定義とズレる - 対象従業員の拾い方が不正確
全月支給、パート換算、休業・時短勤務の扱いが整理できていない - 表明手続きの漏れ
賃上げの実績以前に、手続不備で取消・返還論点になる
補助金申請では、採択されること自体に意識が向きがちですが、23次公募では採択後の運用まで見据えた設計が欠かせません。
■ 23次公募で押さえたい実務上のポイント
23次公募では、賃上げ要件を「加点」や「形式的な条件」ではなく、経営計画の中核として捉えることが重要です。
そのためには、次の3点を事前に確認しておくと安心です。
- 数値の根拠が明確か:売上計画・付加価値・人員計画と整合しているか
- 制度定義に沿っているか:給与支給総額や対象従業員の考え方にズレがないか
- 表明・管理体制が整っているか:従業員等への周知方法や記録を残せるか
申請書の見栄えを整えるだけでなく、採択後に無理なく達成できるかという観点で事業計画を見直すことが、結果的に返還リスクの回避につながります。
■ 最後に
ものづくり補助金23次公募では、賃金引上げ計画の精度が、採択後の返還リスクを左右する重要論点になっています。
特に、算定方法の誤解や表明手続きの漏れは、後から修正しにくいポイントです。
申請前の段階で制度要領に沿って整理しておくことが大切です。
「自社の賃上げ計画で要件を満たせるのか」「対象従業員の整理はこれで合っているのか」など、不安がある場合は早めの確認をおすすめします。
当事務所では、補助金申請だけでなく、採択後を見据えた計画設計まで含めて丁寧にサポートしております。お気軽にご相談ください。